時をかける少女
Last-modified: 2008-02-03 (日) 23:08:02 (5919d)
概要
高校生の紺野真琴は学校の理科室で、過去へ戻ってやり直すことのできる、タイムリープ(時間跳躍)の力を手に入れる。
「魔女おばさん」と呼んで慕っている芳山和子に話を聞いたときは半信半疑だったものの、タイムリープの使い方を覚えてからは、ちょっとした不満や欲望の解消にタイムリープを使う真琴。
しかし、タイムリープを繰り返していくうちに、周囲の人たちとの関係に変化が起きる。
その変化に戸惑い悩んでいたところに、遊び仲間の津田功介にあこがれる下級生、果穂の恋の相談まで受けてしまう。
果穂の恋を成就させるためにタイムリープを行う真琴だが、それは容易なことではなく――。
筒井康隆の小説「時をかける少女」を原作にしつつ、原作の約20年後を舞台にした続編。
2006年7月の公開当初は小規模な上映だったものの、ネットなどの口コミによって評判が広がり、長期間にわたる上映が行われた。
感想
本編
原作の小説は読んだことがなく、実写映画版も見たことはありません。(実写映画版については、Wikipedia「時をかける少女 (1983年の映画)」)
内田有紀主演のフジテレビ連続ドラマ版は見たことがあるものの、これは原作とは若干内容が違う“アイドルドラマ”。
ということで、ほとんど前知識のない状態で見ました。
見て最初に感じたのは、「大人ウケする作品だな」ということ。
あるいは「ジブリ的」な印象。
さまざまなアニメ関連の賞を受賞したことが伝えられている作品だけど、一見してすぐに「ああ、これは賞のウケがいいだろうな」と思える作品。
それが良いか悪いかは、好みによるけど。
テンポの良い展開とスピード感のある描写。
美しい背景。
豊かでやわらかい人物表現。
過度な装飾が抑えられた、限りなく現実に近い非日常は、どこか懐かしい雰囲気。
見ている内に、自然と作品に引き込まれていく。
一方で、あまり深く掘り下げる描写は少な目。
画面は淡々と、非日常の中で起きる事実をありのままに映すだけ。
ある夏の季節に一人の少女の身に起きた出来事を、ただ「こういった事があった」と伝える――だけのように表現されている。
人物の心の動きも、直接の言葉ではあまり表現されていない。
画面に映るさまざまな“モノ”や背景、絶妙な“間”などによって、間接的に伝えられる。
そのため、“ただ見ているだけ”だと少しわかりにくい。
その“画面”から「何を伝えようとしているのか」を、考えるまでいかなくても、感じ取るように心がけなければいけない。
このあたりは、少し「邦画的」あるいは「文学的」に感じられる。
「時かけ」は、エンディングテーマの直前に「後日談」が入る。
「タイムリープ」事件が終わり、新しいメンバーで野球をしながら、真琴が夏空を見上げる。
わずか2秒半ほどのシーン。
物語としては、その前の“別れ”のシーン(チャプター19)でひと段落ついてるのに、あえて入れられている。
一見すると、なんでもないエピローグ。“再び日常が戻ってきた”というだけのようにも見える、なんでもないようなシーン。
でも、この「後日談」中の1:32:40くらいから流れる10秒に満たないシーンが一番印象に残った。
良く晴れた夏空を真琴が見上げる。
画面は真琴の視線を追って、夏の青空を下から上にスクロール。
大きな入道雲のてっぺんが見えたところでスクロールは止まるけど、さらに上に昇ろうとする入道雲。
「ひたむきに一生懸命に前を目指す」ことは、きっとこんなにも清々しい。
そんないつの間にか忘れていたことを気づかされた。
そう考えると、“未来が来るのを待つ”かつて時をかける少女だった芳山和子と、
“望む未来を追って走る”紺野真琴はとても対照的かもしれない。
限定版には、おまけディスクが2枚とブックレットが付属する。
でも、どれも“どうしても見ておいた方がいい”というほどではなく、製作スタッフに強い興味や思い入れがないなら、通常版との値段差分は高すぎるかもしれない。
トラック情報
DISC 01
- 「時をかける少女」本編
- 完成披露試写会舞台挨拶
- 奥華子「ガーネット」ビデオクリップ
- 劇場予告編
- プロモーション映像
- TV CF集
- オーディオコメンタリー「時かけ同窓会」(SET UPメニューから「オーディオコメンタリー」を選択して本編再生)
DISC 02
- ビジュアル・ノート
- ディレクション・ファイル
- 完成披露試写会舞台裏
DISC 03
- 「時かけ」スケッチブック